ごあいさつ
しろもとデンタルクリニック福岡の歯科医師の岩崎です。
『歯をきれいにすることが目的ではありません』
悩みを解決して、自信を持って、笑顔になっていただきたいのです。わたしたちは、そのお手伝いをしたいのです。歯に対する思いは十人十色でさまざまです。平均以上の白い歯をされているのに黄色い感じで嫌だから、もっと白くしたいとホワイトニングを希望される方もいます。
歯並びに関しても、日本人はあまり関心が高いとは言えません。アメリカでは歯並び=人格とされる位、優先事項であり、ほとんどの人が当たり前のように子供時代に歯列矯正をしているのが実情です。ヨーロッパの国々もアメリカほど極端ではないにしろ、そこそこきれいな歯並びをしています。一方同じアジアでも、シンガポールや香港など国際的な大都市では、きれいな歯並びをしている人の割合がかなり高くなっています。東京や福岡ではどうでしょうか。
きれいな歯並びはむし歯や歯周病になりにくく、不正咬合は顔貌のみならず、全身的にもさまざまな悪影響を及ぼしてしまいます。そうした視点からもきれいな歯並びを持つことが望ましいのは言うまでもありません。だからといって、日常の生活に極端な支障を起こしていないことも現実です。そのため、不正咬合は病気(疾病)ではないと解釈されていて、医療保険の対象外になっているのです。
私たちが学んできた理想的な歯の形や歯並びは世界標準であり、ミスインターナショナルでもひとつの選考基準になっています。とは言え、歯に対する価値観の違いがあってもいいはずです。
歯並びや歯の形色などがよくなかったとしても、ひとつの個性として自信を持って笑顔でいられるのであれば治療の必要性はないと思います。一方、それで悩まれている方は治療によって自信を取り戻していただければいいのではないでしょうか。
私たちは単に歯や歯並びをきれいにするのではなく、悩みを解消して、その人自身がもっともっと輝いていただけるように、お手伝いをしているだけなのです。
私が歯科医という職業を選んだ理由
私の親は医者でも歯医者でもなく、貧しい家庭環境の中で育ってきました。インテリジェンスやデンタルIQも当然低く、子供の頃の私はむし歯も多く、中学生になる頃には早くも奥の永久歯2本失い、もっともむし歯になりにくい下の前歯4本も治療して冠をかぶせるような状態でした。この状態でも普通にご飯が食べられたし、何の不自由も感じることもありませんでした。

野球に明け暮れ、夢の甲子園もあと二つというところまで行きました。その夢の続きは東京六大学でという単純な理由で、慶応かレギュラーになれそうな東大へ進学希望だったのです。(慶応は経済的に、東大は学力的に無理でしたが)
高校卒業の目前、あるテレビ番組を見て急きょ医療人になりたいと大きく気持ちが変わりました。その頃、放置していた私の歯が徐々に不具合を起こし始めた時でもありました。それが私を歯科に目覚ませた第一歩でした。ところが国立の歯学部なんてそんな簡単に入れるわけでもなく、それから一年間後に(ほんとうに)運よく地元の九州大学に入学することができました。

大学で歯学を学んで、始めて自分の歯の深刻な問題に気づかされました。2本の永久歯(右上と左下の奥歯)が抜いたまま放置していたため、隣りの歯が大きくずれ倒れこんでしまっていたのです。
それは本来の安定した噛み合わせにはほど遠く、歯そのものもむし歯や歯周病のリスクを高めるだけでなく、外傷性咬合になっているため、あごの関節や咀嚼筋にも悪影響し、全身のバランスを崩していることを知ってしまったのです。
それ以外にも首の位置がわずかに横にずれ、姿勢も片方に傾いた状態で、左右対称に立つことができない状態になっていました。このように上下の歯(あご)が左右にずれているので、歯と顔の中心がまったく合っていない顔貌になっていたのです。後悔先に立たず状態です。
私が歯科医になったことで、危険な状態の歯も、なんとかむし歯や歯周病のリスクを軽減することはできますが、本来のきれいな歯並びに戻すことの方がリスクを高めてしまうこともあります。私は長年多くの方の歯を見てきましたが、奥歯が最悪の状態の人でも下の前歯に関してはほとんど無傷できれいな状態です。私がどれほど歯を磨かず、お菓子ばかり食べていたのか痛感しています。
ということで、私自身歯に関してずいぶん苦労してきたので、多くの人にそういうつらい思いをしてほしくないと思っています。

もうひとつ、私が歯医者になるべく運命的な事件がありました。息子が10歳の時、交通事故に遭い、下顎骨骨折、上顎歯槽部の骨折、上の前歯3本を完全脱臼する怪我をしました。
大学病院の口腔外科に在籍していたこともあって、すぐさま入院先の救急病院内で処置をさせてもらいました。私が歯科医でなかったら、歯は脱臼したまま放置され、使いものにならなかったことでしょう。救急病院内では脳や全身の受傷の治癒が最優先されるからです。
当時も治療ができたのは受傷後6時間ほどたっていたので、歯の再植のゴールデンタイムとしては微妙でしたし、ダメージが大きかったので完全に元通りにくっつくことは期待できませんでした。それから8年が経過し、なんとか歯は口の中にとどまっていますが、外傷による影響で歯の根はしだいにとけはじめ、かろうじて存在している状態です。さらに歯根は吸収され、最終的にはこの3本は脱落していくことになります。

私が苦しんできた分、同じ思いをさせたくなかったので、むし歯のないきれいな歯並びを作り上げていくことが歯科医師として一番の努めでしたが、非常に困難な宿題をもらってしまうことになりました。きっと歯科医としての技量が試されているのでしょう。
なるべくして歯科医になったのかもしれませんね。